物質・材料研究機構 マテリアル基盤研究センター

放射光イメージンググループ

Synchrotron Radiation Imaging Group, Center for Basic Research on Materials, National Institute for Materials Science



NanoTerasuでの研究成果

NanoTerasuにおいて高輝度・高コヒーレンスな軟X線と先端的な計測技術を活用し、磁性体の電子状態、磁気秩序、磁区構造を多角的に明らかにする研究を進めています。元素選択的なX線磁気円二色性分光、磁場中軟X線イメージング、構造化軟X線ビームの生成・評価などを通じて、従来の精密分光をハイスループット計測や実空間観察、トポロジカルな光計測へと発展させています。本ページでは、NanoTerasuを利用して得られた代表的な研究成果を紹介します。

軟X線光渦の可視化とトポロジカ数の評価

NanoTerasuの高コヒーレンス軟X線を用いて、位相構造や軌道角運動量をもつ「構造化軟X線ビーム」を定量的に評価する手法を開発しました。回折格子によって生成したラゲール・ガウス(LG)モードおよびエルミート・ガウス(HG)モードの軟X線をインラインホログラフィーで測定し、振幅分布と位相分布を再構成しました。さらに、位相の回転数を表すトポロジカルチャージの空間分布を解析し、LGビームでは設計値に対応するトポロジカルチャージ成分を高い精度で検出しました。HGビームについても、複数のLGモードの重ね合わせとして、そのトポロジカルチャージ成分を定量的に評価できることを示しました。本成果は、構造化軟X線の特性を精密に制御・評価するための基盤であり、将来的には磁気渦、カイラル磁気構造、多極子秩序など、トポロジカルな磁気状態の観測や操作への応用が期待されます。


【関連論文】
Y. Ishii, and Y. Yamasaki
"Evaluation of topological charge distribution of structured soft X-ray beam,"
Journal of the Physical Society of Japan 95, 063002 (2026) 10.7566/JPSJ.95.063002

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コヒーレント軟X線回折イメージング

コヒーレント軟X線回折イメージング(CDI)は、試料から生じる回折パターンを測定し、位相回復計算によって実空間像を再構成するレンズレス顕微鏡技術です。軟X線の元素選択性と磁気感受性を利用することで、磁性元素に由来するナノスケールの磁気構造を観察できます。本研究では、NanoTerasu BL14Uで開発した四極電磁石搭載軟X線顕微鏡を用いて、マルチフェロイック物質BiFeO3のコヒーレント回折測定を実施しました。その結果、数十ナノメートル周期で変調する正弦波状の磁気構造を実空間で可視化することに成功しました。


【関連論文】
Y. Ishii, Y. Kozuka, S. Kawachi, T. Ito, Y. Wakabayashi, H. Nakao, T. -h. Arima, and Y. Yamasaki,
“Development of soft X-ray microscope with a four-pole magnet",
Science and Technology of Advanced Materials (STAM) Method, 2586300 (2025); 10.1080/27660400.2025.2586300


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ハイスループットX線磁気円二色性(XMCD)の計測

3元系組成勾配膜を対象に、高スループットX線磁気円二色性(XMCD)分光法を用いた磁気特性マッピング手法を開発しました。従来のステップ計測と比べ、「on‑the‑fly XMCD」計測手法を採用することで、スペクトル取得時間を約10倍短縮しつつ、高精度を維持しました。得られたXMCDスペクトルにはSavitzky–Golay法によるノイズ除去処理を施し、さらにXMCD総和則を用いて磁性元素それぞれの軌道・スピン磁気モーメントを定量化しました。その結果、組成の変化に伴う元素別磁気モーメントの分布を鮮明なマッピングを16時間以内で取得することに成功しました。これにより、最適な組成領域が特定され、磁性材料の探索・設計プロセスの加速に貢献することが期待されます。


【関連論文】
Y. Yamasaki, N. Sasabe, Y. Ishii, Y. Sekiguchi, A. Sumiyoshiya, Y. Tanimoto, Y. Kotani, T. Nakamura, and H. Nomura
"High-Throughput Mapping of Magnetic Properties via the on-the-fly XMCD spectroscopy in a Combinatorial Fe-Co-Ni Film"
Science and Technology of Advanced Materials (STAM) Method 5, 2544528 (2025); arXiv:2506.20958


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